誰でも確定拠出年金に入れるようになるのは、年金改革のすばらしい第1歩。ですが…

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日本経済新聞(電子版)に、
確定拠出年金に誰でも加入、主婦・公務員も 厚労省案
という記事が掲載され、アクセスランキングでもトップとなっていました。

確定拠出年金に限らず、年金全般の関心の高さがうかがえますが、
僕も以前、確定拠出年金口座の商品比較をしたこともあり
この改革案についてコメントしたいと思います。

素晴らしい第1歩である改革案ですが、
これで終わりということはありませんので。


そもそも確定拠出年金(DC)ってなんだ

確定拠出年金(Defined Contribution、以下DC)については
少なくともその名前を聞いたことはあると思います。

ただ、現状わずか0.5%と加入率が低く
仮に加入していても元本保証型商品で放置している方も多いようで
その具体的な中身をしっかり理解している方は非常に少ないでしょう。

ほとんどの人が「他人事」と思っているかもしれません。

そんな状態で、制度を続ける意味があるのか?
と思われるかも知れませんね。

ここで少し、DCの意味についてお話ししたいと思います。


DCはその名のとおり
「自分(と企業)が資金を拠出(毎月積み立て)し」
「運用は各自の裁量に任せる(自由に運用できる)」
タイプの年金制度で自己責任型の年金です。


  • 個人でリスクを取ることの意味

「いや、年金は社会保障。年金額は、国や企業が保障すべきだ!」


という意見もあるかも知れませんが、
そのようにして運用されてきた確定「給付」年金が、
存続の危機に立たされているのは
既にご存知だと思います。


これは要は
高利回りが約束された夢のような商品は、世の中には無い
という当たり前のことを示していて、
ある程度リスクを取らなければ運用益も期待できないよ、
ということの裏返しになっています。

だからといってDCのようなことを国や企業が「まとめて」
やってしまうのもそれはそれで問題です。
(結局、確定給付(DB)がこれなんですが)

運用ですから損失が発生する時も当たり前のようにありますが、
恐らく多くの人は「損をしたのは国や企業のせいだ!」といって
批判するようになるでしょう。

そうなれば政治の混乱を招く恐れもあり、
さりとて文句を言ったからといって国民の利益になるでもなく、
誰にとってもメリットがありません。

結局、お金を殖やすには個々人でリスクをとるしかないわけです。


  • 個人で拠出することの意味

拠出は企業や国がやるべきだ!という論理にも無理があります。
なぜかというとお金はどこからともなく湧いて出てくるものではない
からです。

仮に企業や国が拠出するようになったとしても、
それは形式的にそうなるだけで、その実は
給与の原資や国税から支払われることになります。

もちろんその源は個人の労働の対価であったり、
個人の収入への税金であったりです。


個人に見えないように間接的に天引きすることは
例えば行動経済学的にメリットがあるかも知れませんが
そのメリットを追求するにしても
「個々人の給与天引き」で見える化しておいたほうが
余計な間接コストを払わずに済む可能性が高い。

ですので、やはり個人で拠出するという形のほうが理想的です。


以上のような理由から、確定給付年金の弱点(限界)を補うために
個々人で自由にリスク設定のでき、かつ節税メリットのあるDCが登場し
今少しずつですが、徐々に広まりつつあるという段階なんですね。



確定拠出年金(DC)の使いにくいところ

このようにDCには理にかなった部分が多いのですが
かといって、日本のDCが使いやすい制度かというと
いろいろな課題も存在しています。

DCは日本版401kとも呼ばれることから
欧米の制度よりも後発の制度になっています。
だったら海外制度を改良した、より良い制度なのか?
というと実はそうでもありません。

金融庁発行の「家計の資産形成を支援する制度の在り方に関する調査」報告書
によれば、有識者等から


  • 拠出限度額が低く、十分な資産形成が出来ない
  • 個人型の加入対象者に制約がある
  • 中途引き出しが厳格に制限されていて、使い勝手が悪い
  • 特別法人税の凍結期限が2017年3月で切れる
  • 資産の6割が元本確保型商品に入れられている

が課題ないし問題点として挙げられており
これらの制度改革をすべきと結んでいます。

ただ、厚労省の「社会保障審議会企業年金部会」(以下年金部会)が
公開している資料では、明確な改革案(結論)としての提示は
なされていないように見えます。

ここでは日経新聞が記事にした改革案が
年金部会で前向きに検討されている
と理解しておきます。


さて、上の課題のどれ一つとっても大きなもので
DC口座が伸び悩んでいる要因ともなっているんですが
今回の厚労省案はこの中で「個人型の加入対象者に制約がある」
に焦点を当てたものと位置づけられます。

さらに専業主婦等のDC加入が認められるようになれば、
世帯あたりの拠出限度額が事実上向上し
拠出限度額が低いという課題も緩和されます。


これらが解決されれば、残る課題は
「中途引き出し」
「特別法人税」
「運用商品とその選び方」
の3つとなります。

特に特別法人税と運用商品については
老後の資産形成に具体的に大きなインパクトを与えかねない、
運用者各個人にとって、とても大きな問題です。

特別法人税は「資産額」に対して約1.2%を課税するというもので
こんな資産税はありえないだろ!といって
個人はもとより、金融界、経済界、からも反対されています。

かような事情により、かれこれもう10年以上凍結されている税ですが
既得権益がらみでややこしいためか、なかなか撤廃まで進みません。

事実上廃止状態とはいえ、
余計なリスクは早く無くして欲しいものです。


また運用商品に関しても、現在は元本変動型商品として
高コストな運用商品しか置いていないDC口座もあり、
必ずしも年金のための口座として適切ではないものもあります。

本来は金融機関同士で切磋琢磨し、
よりよい商品を提供しなければならないところ
DC口座には課税口座のような競争原理が働きにくいため
残念な口座も少なからず存在しています。


これらについてはいずれ別記事で書きたいと思います。



今後の動向と期待

まだまだ議論の余地があるDC改革ですが、
重要な1歩を踏み出したという点では、
評価できるのではないでしょうか。

まだ案の段階ですので実現されるかどうかは未定ですが
これすら改革できないとなればDCの存続、
ひいては年金制度全体の存続も危うくなっていくことが容易に想像できますので
着実に進めて欲しいと思います。


上の課題を一つ一つクリアして欲しいのはもちろんですが、
改革のさらに長期的な流れとしては以下があると考えます。


  • 年金はより「個人」を意識したものになる。今は企業がDCのマッチング拠出など、そうした束縛は今後縮小されると考えます。なぜなら、離転職の増加や個人の働き方の多様化などの進展により、会社員を前提とする制度にムリが生じてくるからです。

  • より「公平性」が重視されるようになる。政府や企業が老後の面倒が見られなくなっていきます。そうした受け皿となるDCのような制度は多様な人が利用することになるので、より公平でシンプルな制度になっていくことが期待されます。


「会社員を前提とする制度にムリ」というのは例えば
副業やパラレル・ワーキングなどを想像すると分かりやすいですし、
起業を促進するという方向性とも相入れません。

イチ企業の業績が不安定になる中、二足のわらじを履く人、
リスクを取って独立する人が今後増えていきます。

要は「働き方が多様化」していくわけです。
(年金部会資料では、より広い概念でライフコースの多様化というテーマで議論している)


そうなれば、いったいどこに収入の軸足を置くべきかなんて、
定義できなくなりますよね。

収入の多さ?
副業の方が多い人はどうするの?
会社の業績が悪化して収入が減ったら?
とか、ちょっと考えただけでも議論噴出ですね。

ですから、多様な収入源を持つ「個」があって
その個が拠出する私的年金がある
という形が最もシンプルで理想的なわけです。



個人はどうするべきか

DCの制度改革が具体的にどうなるかはまだ分かりませんが
大きな方向性として「個人の責任でリスクを取る」方向に
変わりはないでしょう。


では個々人としてどうすべきなのか?

現状、上のような課題があるにしても


  • 投資時非課税(所得控除)
  • 利益非課税
  • 受け取り時の課税優遇

という3つの特典がついていますから、
60歳以降の準備資金にしたいという明確な目的があるなら
DCを検討する価値は十分あります。

確定拠出年金(DC)、運用商品とコストを徹底的に比較した結果…狙い目はココ!

も参考に、DCも上手く活用していくようにしてください。


ps.

努力や投資法とは無関係に、こんなに資産が変わることはご存知でしたか?


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こんにちは、林FP事務所代表の林健太郎です。ブログご訪問ありがとうございます。

工学博士(阪大)、個人投資家。投資歴は10年以上。金融機関に属さず、保険・証券の販売に一切関与しない、完全独立のファイナンシャルプランナーです。アラフォー、2児の父。

今後、日本では好むと好まざるとにかかわらず、どんどん自己責任が問われていくようになるでしょう。自助努力で資産形成していくこと、そしてその方法を中立な立場で伝えていくことが大切だと考え、独立して活動しています。

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